20年・25年・35年・40年・50年で比べる
返済期間で「年収の何倍」は変わる
年収倍率は、借入額が年収の何倍かを表す指標です。返済比率(返済負担率)は、年間の返済額が年収に占める割合を指します。 住宅ローンの記事では「年収の7倍まで」「返済比率25%以内」といった目安がよく挙がりますが、 このどちらも返済期間を決めない限り数字になりません。
銀行の審査は返済比率で行われます。年間返済額が年収の上限割合に収まるかを見るので、 返済期間が延びて1回あたりの返済額が下がれば、そのぶん借りられる元金は増えます。 つまり年収倍率は、返済比率の上限と返済期間から逆算された結果であって、 独立した基準ではありません。
以下の金額はすべて、年収600万円・審査金利3.0%・実行金利0.7%・他の借入なし・元利均等返済の条件で、当サイトの計算エンジンが算出した実値です。
結論 — 同じ年収でも5.3倍から9.1倍まで動く
返済期間だけを変えて借入可能額を計算すると、年収倍率は次のようになります。
| 返済期間 | 借入可能額 | 年収倍率 | 毎月返済額 | 返済比率 | 総返済額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 20年 | 3,155万円 | 5.26倍 | 140,933円 | 28.2% | 3,382万円 |
| 25年 | 3,690万円 | 6.15倍 | 134,124円 | 26.8% | 4,024万円 |
| 30年 | 4,151万円 | 6.92倍 | 127,864円 | 25.6% | 4,603万円 |
| 35年 | 4,547万円 | 7.58倍 | 122,102円 | 24.4% | 5,128万円 |
| 40年 | 4,888万円 | 8.15倍 | 116,795円 | 23.4% | 5,606万円 |
| 45年 | 5,182万円 | 8.64倍 | 111,903円 | 22.4% | 6,043万円 |
| 50年 | 5,435万円 | 9.06倍 | 107,388円 | 21.5% | 6,443万円 |
よく目にする7倍前後という水準は、返済期間35年で計算したときの値(7.58倍)にあたります。返済期間20年で同じ年収倍率を当てはめると、審査には通りません。 倍率だけを持ち出した比較は、期間を書いていなければ根拠になりません。
期間を延ばす効果は逓減する
借入可能額は返済期間に比例しては増えません。曲線は上に凸で、右へ行くほど寝ていきます。
縦軸は借入可能額。年収600万円・他の借入なしで、返済期間を1年刻みで計算した結果です。
5年ごとに増える金額を並べると、逓減がはっきりします。
| 延ばす区間 | 増える借入可能額 | 1年あたり |
|---|---|---|
| 20年 → 25年 | +535万円 | 107万円 |
| 25年 → 30年 | +460万円 | 92万円 |
| 30年 → 35年 | +396万円 | 79万円 |
| 35年 → 40年 | +341万円 | 68万円 |
| 40年 → 45年 | +294万円 | 59万円 |
| 45年 → 50年 | +253万円 | 51万円 |
20年から25年へ延ばすと1年あたり107万円増えますが、 45年から50年では51万円まで落ちます。元利均等返済では、後ろに足される返済回数ほど現在価値が小さくなるためです。審査金利3.0%で35年後に払う1万円は、いま借りられる元金に換算すると 3千円台の価値しかありません。期間を延ばして借入枠を広げる手は、 長い期間から始めるほど効きにくくなります。
審査金利が上がると、曲線ごと下にずれる
銀行は実際に適用する金利ではなく、3〜4%程度の審査金利で返済比率を判定します。 審査金利が変われば、返済期間を変えなくても年収倍率は動きます。
| 審査金利 | 20年 | 25年 | 30年 | 35年 | 40年 | 45年 | 50年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3.0% | 5.26倍 3,155万円 | 6.15倍 3,690万円 | 6.92倍 4,151万円 | 7.58倍 4,547万円 | 8.15倍 4,888万円 | 8.64倍 5,182万円 | 9.06倍 5,435万円 |
| 3.5% | 5.03倍 3,017万円 | 5.83倍 3,496万円 | 6.50倍 3,897万円 | 7.06倍 4,234万円 | 7.53倍 4,517万円 | 7.93倍 4,755万円 | 8.26倍 4,955万円 |
| 4.0% | 4.81倍 2,888万円 | 5.53倍 3,315万円 | 6.11倍 3,666万円 | 6.59倍 3,952万円 | 6.98倍 4,187万円 | 7.30倍 4,380万円 | 7.56倍 4,537万円 |
審査金利が3.0%から4.0%へ上がると、 35年返済の年収倍率は7.58倍から6.59倍へ下がります。 金額では595万円の差です。審査金利1%の違いは、返済期間10年分以上の効き方をします(審査金利4.0%・50年の借入可能額4,537万円は、審査金利3.0%・35年の4,547万円と同水準です)。
逆から見る — 同じ4,000万円を期間別に返す
ここまでは「いくらまで借りられるか」の話でした。借入額を4,000万円に固定して返済期間だけを動かすと、期間の効き方は反対向きに見えます。
| 返済期間 | 毎月返済額 | 返済比率 | 総返済額 | うち利息 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 178,654円 | 35.7% | 4,288万円 | 288万円 |
| 25年 | 145,379円 | 29.1% | 4,361万円 | 361万円 |
| 30年 | 123,218円 | 24.6% | 4,436万円 | 436万円 |
| 35年 | 107,408円 | 21.5% | 4,511万円 | 511万円 |
| 40年 | 95,568円 | 19.1% | 4,587万円 | 587万円 |
| 45年 | 86,374円 | 17.3% | 4,664万円 | 664万円 |
| 50年 | 79,032円 | 15.8% | 4,742万円 | 742万円 |
返済比率だけを見れば、期間を延ばすほど数字は改善します。20年返済の35.7%は審査上限(年収400万円以上で35%)を超えていて、 そもそもこの条件では借りられません。50年返済なら15.8%まで下がり、安全圏とされる20%台前半も下回ります。
その改善は、利息と返済年数を対価にして買っています。同じ4,000万円に対する総支払額の内訳を並べると、次のようになります。
35年返済 — 総支払 4,511万円
50年返済 — 総支払 4,742万円
利息は511万円から742万円へ、231万円増えます。毎月の返済額は28,377円軽くなりますが、返済は15年長く続きます。同一条件で返済期間を延ばせば、毎月返済額と返済比率は必ず下がり、総利息は必ず増えます。どちらを重く見るかは、家計の状況と何を優先するかによって変わります。
借入額を固定していれば返済比率は下がりますが、借入可能額まで借りる前提だと話が変わります。 上の表のとおり、借入可能額いっぱいまで借りた場合の返済比率は35年で24.4%、50年でも21.5%と、2.9ポイントしか変わりません。総返済額は1,315万円増えます。期間を延ばして生まれた余裕を借入額に回すと、月々の負担は変わらないまま総額だけが増えます。
40年・50年は完済時年齢の上限で頭打ちになる
返済期間は希望すれば選べるわけではありません。多くの金融機関が完済時年齢の上限を80歳未満としており(フラット35は80歳)、 返済期間の上限は「上限年齢 − 借入時の年齢」で決まります。 借入時の年齢別に、完済年齢がどうなるかを並べます。
| 借入時の年齢 | 35年返済 | 40年返済 | 45年返済 | 50年返済 |
|---|---|---|---|---|
| 25歳 | 60歳 | 65歳 | 70歳 | 75歳 |
| 30歳 | 65歳 | 70歳 | 75歳 | 80歳 基準次第 |
| 35歳 | 70歳 | 75歳 | 80歳 基準次第 | 85歳 上限超 |
| 40歳 | 75歳 | 80歳 基準次第 | 85歳 上限超 | 90歳 上限超 |
50年返済が成立するのは、実質的に30歳前後より若い場合に限られます。 40歳で借りるなら返済期間の上限は40年前後で、50年返済という選択肢はそもそも表に出てきません。 親子リレー返済のように返済者を引き継ぐ商品では、後継者の年齢で判定するため長い期間を組めますが、 その場合は返済義務も引き継がれます。
もう一点、返済期間の後半が定年後にかかるかどうかも別の問題として残ります。35歳で35年返済なら完済は70歳、50年返済なら85歳です。65歳以降の返済を退職金や年金で賄う前提になっていないかは、 借入可能額の表とは別に確かめる必要があります。ライフプラン シミュレーションは、教育費・年金・退職金を織り込んだ95歳までのキャッシュフローで、その部分を確認できます。
年収400万円未満は倍率も一段下がる
返済比率の上限は年収で切り替わります。フラット35では年収400万円以上で35%、 400万円未満で30%です。期間の効き方の形は変わりませんが、曲線全体が下にずれます。
年収350万円・返済期間35年・審査金利3.0%では、返済比率の上限が30%となるため、 借入可能額は2,274万円、年収倍率は6.50倍です。 年収600万円の同条件は7.58倍なので、倍率にして1.08の差があります。年収倍率は、返済期間・審査金利・返済比率の上限という3つが決まって初めて数字になります。
返済期間を決める順序
ここまでの数字を、判断の順に並べ直すと次のようになります。
- 選べる上限を確かめる — 完済時年齢80歳未満の制約で、 借入時の年齢から返済期間の上限が決まります。
- 必要な借入額から逆算する — 物件価格と頭金から必要額を出し、 その額が審査を通る最短の期間を探します。上の表では、期間を延ばして増える借入枠は 35年より先で1年あたり68万円を切ります。
- ピーク時の返済比率で見る — 変動金利を選ぶ場合、 借入時の返済比率ではなく、金利が上がったあとの返済比率で判断が変わります。返済負担率が審査上限まで上がるとで、その伸び方を試算しています。
- 長めに借りて繰上返済で調整する手もある — 契約期間を短くすると 毎月の返済義務が重くなりますが、長めに契約して余裕がある年に繰上返済すれば、 返済義務を軽く保ったまま総利息を減らせます。ただし住宅ローン控除は 返済期間が10年未満になると全額不適用になります。
※ 4は「期間短縮型の繰上返済で当初の期間差を埋める」考え方です。実際の削減額は実行時期と金額で変わるため、期間短縮型と返済額軽減型と控除中に繰上返済すべきかもあわせてご確認ください。
この試算の前提
- 元利均等返済・ボーナス返済なし・全期間で金利一定として計算しています。
- 返済比率の上限はフラット35の基準(年収400万円以上35%、400万円未満30%)を用いています。 民間の金融機関では30〜35%を上限とし、実務上33%前後を目安に置く例もあります。
- 審査金利・完済時年齢の上限・取り扱う最長返済期間は金融機関ごとに異なり、 公表されていない場合もあります。実際の審査では勤務先・勤続年数・雇用形態・信用情報・ 物件の担保評価も総合的に判断されます。
- 諸費用・団体信用生命保険料・保証料は含めていません。
- 完済時年齢の上限は、民間金融機関に多い「80歳未満」を基準に判定しています。 フラット35は完済時80歳までで、借入期間の上限は「80 − 申込時年齢」と35年(フラット50は50年)の 短いほうです。実際に選べる返済期間は商品ごとに異なります。
- 掲載している金額は作成時点の制度と一般的な基準に基づく概算です。 借入の可否と具体的な条件は取引先の金融機関に、税制の適用可否は税務署または税理士にご確認ください。免責事項もあわせてご覧ください。
よくある質問
住宅ローンは年収の何倍まで借りられますか?
返済期間によって変わります。年収600万円・審査金利3.0%・他の借入なしの条件では、返済期間20年で約5.3倍、35年で約7.6倍、50年で約9.1倍です。「年収の◯倍」という目安は返済期間を固定しないと数字が定まりません。よく見かける7倍前後という水準は、返済期間35年を前提にした値です。
返済期間を5年延ばすと借入可能額はいくら増えますか?
延ばす位置によって変わり、期間が長くなるほど増え方は小さくなります。年収600万円・審査金利3.0%では、20年から25年へ延ばすと535万円増えますが、35年から40年へ延ばして増えるのは341万円です。1年あたりに直すと107万円から68万円へ落ちます。元利均等返済では、期間が延びるほど追加される返済回数の現在価値が小さくなるためです。
40年・50年の住宅ローンは誰でも組めますか?
組めません。多くの金融機関が完済時年齢の上限を80歳未満(フラット35は80歳)としているため、返済期間の上限は「上限年齢 − 借入時の年齢」で頭打ちになります。35歳で借りる場合、50年返済では完済が85歳となり、この基準を超えます。50年返済を選べるのは、実質的に30歳前後より若い層か、親子リレー返済など返済者を引き継ぐ商品に限られます。
返済期間を延ばすと返済比率(返済負担率)は下がりますか?
同じ借入額なら下がります。4,000万円を金利0.7%で借りた場合、年収600万円に対する返済比率は20年返済で35.7%、35年返済で21.5%、50年返済で15.8%です。ただし総利息は288万円から742万円へ増えます。返済比率の低下は、利息と返済年数を対価にして得られるものです。
借入可能額いっぱいまで期間を延ばして借りるとどうなりますか?
借入額も同時に増えるため、返済比率はほとんど下がりません。年収600万円の条件で借入可能額まで借りると、実行金利0.7%での返済比率は35年で24.4%、50年でも21.5%です。一方で総返済額は5,128万円から6,443万円へ増えます。期間を延ばして生まれた余裕を借入額に振り向けると、毎月の負担は変わらないまま総額だけが増えます。
審査金利が変わると年収倍率はどうなりますか?
期間を変えなくても倍率は動きます。年収600万円・返済期間35年では、審査金利3.0%で約7.6倍、4.0%では約6.6倍です。審査金利は金融機関ごとに異なり、公表されていない場合もあります。年収倍率は「返済期間」と「審査金利」の2つが決まって初めて数字になります。
年収600万円・返済期間40年・審査金利3.0%の条件を読み込んだ状態で開きます。返済期間のスライダーを動かすと、借入可能額と返済比率がその場で変わります。
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