控除を残すか、利息を減らすか
住宅ローン控除中、繰上返済は待つべき?

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末時点のローン残高の0.7%が所得税・住民税から差し引かれる制度です。 ここに繰上返済との利益相反が生まれます。繰上返済で残高を減らすと、控除される金額も減るからです。
「金利が0.7%より低いなら繰上返済は損」という説明をよく見かけますが、これは正確ではありません。 実際に計算すると、答えは金利水準によって逆転します。
先に結論 — 分かれ目はおおむね金利0.7%
借入3,000万円・35年・元利均等、控除期間13年・借入限度額3,000万円という条件で、 300万円の繰上返済(期間短縮型)を「3年目に実行」した場合と「控除が終わった14年目に実行」した場合を比べます。
| 金利 | 実行時期 | 利息の削減 | 控除の減少 | 実質メリット |
|---|---|---|---|---|
| 0.4% | 3年目に実行 | 39.6万円 | −23.6万円 | 16.0万円 |
| 14年目(控除終了後)に実行 | 25.1万円 | 0円 | 25.1万円 | |
| 1.2% | 3年目に実行 | 133.7万円 | −24.8万円 | 108.9万円 |
| 14年目(控除終了後)に実行 | 81.4万円 | 0円 | 81.4万円 |
低金利では控除の減少(0.7%)が利息の削減(0.4%)を上回るため、控除が終わるまで待って手元に置くほうが得になります。 一方、金利が0.7%を明確に超えていれば、繰上返済を早く実行する効果のほうが大きくなります。適用金利が0.7%より上か下かが最初の判断軸になります。
※ 待つ場合でも、そのお金は使わずに確保しておくことが前提です。手元に置いたまま使ってしまえば比較は成立しません。
もっと重大な落とし穴 — 返済期間が10年を切ると控除が消える
住宅ローン控除には「償還期間が10年以上であること」という適用要件があります。 ここでいう10年は当初の契約期間ではなく、繰上返済後に残っている返済期間で判定されます。
つまり、期間短縮型の繰上返済をした結果、返済終了までが10年未満になってしまうと、 その年以降の控除が受けられなくなります。数万円の利息を減らすために、年間20万円前後の控除を数年分まとめて失うという逆転が起こりえます。
- 返済期間が10年を下回らない範囲に繰上返済額を抑える
- 期間を変えない返済額軽減型を選ぶ
当シミュレーターは、繰上返済によって完済までが10年未満になる条件を検知すると警告を表示し、 控除額をゼロとして計算します。
制度の前提を確認する
住宅ローン控除は改正が頻繁です。試算する前に、少なくとも次の3点をご自身の条件で確認してください。
- 借入限度額 — 住宅の種類(認定長期優良住宅・ZEH水準・省エネ基準適合など)と入居年で変わります。 省エネ基準を満たさない新築住宅は対象外となる年度もあります。
- 控除期間 — 新築は原則13年、既存住宅(中古)は10年です。
- 控除額の上限 — 控除されるのは実際に納めた所得税・住民税の範囲内です。 年末残高の0.7%が計算上の控除額を上回っていても、納税額が少なければそこまでしか戻りません。
※ 当シミュレーターは「年末残高 × 0.7%(借入限度額まで)」による概算で、所得税・住民税の納税額による頭打ちは考慮していません。 正確な控除額は税務署または税理士にご確認ください。
シミュレーターの「住宅ローン控除」を有効にすると、控除の減少分を差し引いた実質削減額が表示されます。
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