返済額を抑えた負担は、どこへ行く?
「1.25倍まで」でも、安心とは限らない

125%ルールとは、変動金利型住宅ローンで5年ごとに返済額を見直すとき、新しい返済額を直前の1.25倍までに抑えるという取り決めです。5年ルールとセットで採用されていることが多く、 「金利が急上昇しても返済額は5年で25%までしか上がらない」という安心材料として語られます。
しかし、このルールは支払いを免除する仕組みではありません。抑えられた分は必ずどこかに残ります。 この記事では、その「どこか」を具体的な金額で示します。
抑えた分は元金の減り遅れとして蓄積する
借入3,000万円・35年・当初金利0.5%で、5年ごとに金利が2.5%ずつ上がり8%で頭打ちになる、 という極端なストレスシナリオを置いてみます。 (8%台という水準は1990年前後に実際に存在したもので、あくまで耐性を測るための想定です。)
| ルールの設定 | 総支払額 | うち利息 | 未払利息 | 最終回の一括精算 |
|---|---|---|---|---|
| 5年ルール・125%ルール あり | 6,859万円 | 3,859万円 | 12.2万円 | 12.2万円 |
| ルールなし(見直しのつど反映) | 6,125万円 | 3,125万円 | なし | なし |
毎月の返済額を抑えたことの代償は、この734万円です。ルールは負担を減らしたのではなく、 利息の発生する元金を長く残し続けた結果、支払総額をむしろ増やしています。
未払利息 — 元金が1円も減らない月
このシナリオの16年目(181回目)に何が起きているかを見てみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| その月の毎月返済額 | 152,097円 |
| その月に発生した利息 | 154,133円 |
| 元金に充当された額 | 0円 |
| 払いきれなかった利息(未払利息) | 2,036円 |
返済額15万円をすべて利息に充てても、その月に発生した利息を払いきれていません。 この差額が未払利息です。この状態が続くかぎり元金はまったく減らず、 未払利息は毎月積み上がっていきます。上の試算では最大12.2万円まで累積しました。
未払利息の扱いは金融機関により異なりますが、一般的には繰り延べられ、 返済期間が満了した時点で残った元金とともに最終回に一括で請求されます。 35年かけて返し終えたつもりが、最後にまとまった金額を求められることになります。
125%ルールは「終わりが見えなくなる」リスクでもある
返済額の上昇が1.25倍で頭打ちになるということは、金利上昇のスピードが速い場合、返済額が現実の利息に追いつけない状態が続くということです。 5年に一度しか見直せないため、追いつくにも最短で5年かかります。
その結果、当初の返済期間が満了しても残債が残り、最終回の精算額が数百万円規模になることもあります。 「返済額が急に上がらない」ことと「返し終わる」ことは別の話だ、というのがこのルールの本質です。
ルールがない銀行という選択肢
ソニー銀行、PayPay銀行、SBI新生銀行など、5年ルール・125%ルールを採用していない金融機関もあります。 これらは金利の見直しがそのまま返済額に反映されるため月々の負担増は早く来ますが、元金は予定どおり減り、未払利息も最終回の一括精算も発生しません。 上の試算でも、ルールなしのほうが総支払額は734万円少なくなっています。
短期のキャッシュフローの安定を優先するか、総支払額と見通しの確実性を優先するか。 どちらを選ぶにせよ、数字を見比べたうえで選ぶことが重要です。
※ ルールの採用状況、未払利息の取扱い、最終回精算の方法は金融機関ごとに異なり、商品改定によっても変わります。 契約前に必ず商品説明書でご確認ください。
シミュレーターの「金利急騰 +4%」プリセットを選び、125%ルールを ON / OFF で切り替えてみてください。未払利息のグラフと最終回精算額がその場で切り替わります。
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